甘い恋飯は残業後に
「……なんてな」
しばしの間、お互いに視線を逸らすことも、言葉を発することもしなかった。
先に静寂を破ったのは、彼の方。
難波さんは大きく息を吐いてから、「さてと」と言って立ちあがった。
「リビングに行くか。もう、お湯も沸いてるだろうし」
言いながら、もう既に彼の体はリビングの方に向かっている。
「ソファーに座って待ってろ。今コーヒー淹れるから」
わたしは難波さんがリビングに消えるまで、彼の後ろ姿をぼんやり見つめていた。
部屋には、再び静寂が満ちる。
――どうしよう。
何度も何度も打ち消してきた。違う、そんな筈はないと。そうしなければ、また失う辛さと闘わなければいけなかったから。
でも、もうごまかせない。意識してしまったら終わりだ。
わたしは難波さんのことが――好きだ。