甘い恋飯は残業後に
そう言って少しだけ口角を上げた難波さんの顔を見たら、言葉が出なくなった。
もしかして、わたしが早く来ることを見越して、その口実を作る為だけに難波さんも早く出社してくれた……?
――まさか。
同情したのだとしても、彼がそこまでする理由はどこにもない。
わたしは何を考えているんだろう。そうだったらいいと、自分の都合のいいように解釈してる。
……この気持ちは、心の奥底に封じ込めなければいけないというのに。
程なくして、ひとりふたりと社員が出社してきた。わたしの顔を見て気まずそうな表情を見せる人や視線を逸らす人も何人かはいたけど、大半はいつもと変わらない態度で接してくれた。みんなの大人な対応に、こちらの緊張も徐々にほぐれてくる。
「万椰さん……!」
でもひとり、みんなとは全く違う反応をした人がいた。水上ちゃんだ。
わたしの顔を見るなり、名前を叫びながら駆け寄ってきた。
「ごめんなさい! 週末何度も連絡しようと思ったんですけどっ」
「何で水上ちゃんが謝るの」
「だって……!」
くしゃりと顔を歪めて、今にも泣きそうになっている。
その後ろから大貫課長が「おはよう」とこちらに顔を出した。彼はいつもと変わりなく爽やかな笑顔を見せている。