甘い恋飯は残業後に
「私、万椰さんに何て言えばいいのかわからなくて……」
そんなぐしゃぐしゃになるまで一生懸命考えてくれたのかと思ったら、胸の奥がじんわりと熱を帯びた。
俯き気味でいる水上ちゃんの背中を宥めるようにさすっていると、急に彼女が勢いよく顔を上げたものだからびっくりして仰け反ってしまった。
「万椰さん、今夜空いてます?」
「……空いてる、けど」
「じゃ、暑気払い! 改めて暑気払いに行きましょう! 大貫課長も!」
巻き添えをくった恰好になって、さぞや困惑しているだろうと大貫課長の方を見れば、彼は予想に反して涼しげに微笑んでいた。
「そうだね。行こうか」
このふたりは、本当に――。
「私、後でお店探して予約しておきますね!」
わたしは込み上げてくるものを堪えるのに必死で、ふたりに向かって「ありがとう」と小さく発するのが精いっぱいだった。
どうも先週末から涙腺が緩くなっている気がする。
ちらりと難波さんの方を窺うと、驚くことに彼もこちらを見ていた。慌てて視線をパソコンの画面に逸らす。
「あ、そうだ! 万椰さんちょっと」
水上ちゃんはそう言うや否や、わたしの腕を引っ張って廊下の方へと引きずっていく。
「ちょ……っ、今度はどうしたの?!」
柱の陰まで連れて来られると、水上ちゃんは持っていたバッグから何やら封筒のようなものを取り出した。