甘い恋飯は残業後に
駅を出て何気なく見上げると、めずらしく漆黒の空には星がふたつ浮かんでいた。もっと山寄りの田舎の方に行かなければ、この辺では一等星すら怪しい。
昼間、雨が降ったというのに。空気が澄んでいるのだろうか。
あれからすぐ飲み放題の時間も終わり、微妙な空気のまま解散した。
わたしは電車に揺られながら、ずっと水上ちゃんに言われたことを考えていた。
『万椰さんは“愛され慣れ”してるんですよ』
それを聞いた時は、そんなことはない、と思っていた。
でも、本当にそうだろうか。
リテール本部の山西さんとの一件の時、わたしは、どうせ容姿を見て寄ってきただけでしょう、と端から決めつけて、彼の話を聞こうともしなかった。好意を持ってくれたことに、ありがたいという気持ちも湧かなかった。
そして『モテるなら、イケメンで優しくて、外見だけじゃなくわたしのことをちゃんと見てくれる男にモテたいわよ』と、心の中で毒づいた。
でも自分からは積極的にアプローチする訳でもなく、おいしい餌を置いて待ち構えているだけ。おいしい餌なんだから、いつか極上の獲物がかかるだろうと高を括って。