甘い恋飯は残業後に
ここは『ラーボ・デ・バッカ』という、この辺りではちょっと有名な洋食屋。母の弟である高柳(たかやなぎ)の叔父さんのお店だ。
メニューはグリルハンバーグやオムライスといった一般的に馴染みの深いものから、本格的なものまで揃っている。
料理が苦手なわたしはほとんど自炊せず、月の半分以上は家から徒歩十分圏内にあるこのお店に来ていた。
――というより。
ひとり暮らしするならこのお店の近くじゃなきゃ、と必死に物件を探し回ったんだけど。
「毎日のようにここに来てるからだろ」
「だって、どうしても叔父さんの美味しい料理が食べたかったんだもん」
可愛く言っておだててみたものの、高柳の叔父さんには全く通用しなかったようだ。
「んなこと言って、また何かあったんだろ」
小さい頃からわたしをよく知る人にはやっぱりかなわないな、と苦笑する。
「……仕方ないな。可愛い姪っ子の為に、俺が何品か奢ってやる」
「本当?! やったー!」
「誰かといる時はすました大人のふりして、こういう時は子供だよな、万椰は」
叔父さんは呆れたように笑って、厨房の奥の方へと行ってしまった。