甘い恋飯は残業後に
「今日は、あの変な男に追いかけられませんでしたか?」
カトラリーをセッティングしながら、スタッフの美桜(みお)ちゃんが心配そうな顔で訊いてきた。昨日もここで愚痴ったから、気に掛けてくれていたのだろう。
彼女はこの店で一番長く働いているホールスタッフ。わたしの愚痴にも、くだらない話にも、いつも嫌な顔せず付き合ってくれるいい子だ。
「追いかけられたりはしなかったんだけどね……わたしのことを、周りに悪く言ってるみたい」
「ええっ?!」
美桜ちゃんの驚く声と重なるように、隣からグラスにワインを注ぐ音が聞こえた。
「お前はいつもそんな男にばかり好かれるな」
叔父さんはワインボトルを布で拭きながら、困ったように眉根を寄せる。
「……やっぱりたいした中身がないのかもね、わたし。だからそういう残念な人を引き寄せてしまうのかも」