甘い恋飯は残業後に
「いらっしゃ……あ、万椰さん」
出迎えてくれたのは、美桜ちゃん。彼女はわたしの顔を見るなり、にやりと意味ありげな笑みを浮かべる。
「宗司さんも来てますよ」
「えっ」
見れば、難波さんはカウンター席に座っていた。
今更引き返すことはできない。わたしは渋々、彼の元へと近づく。
「……こんばんは」
「どうした、今日は飲み会だっただろ?」
「ええ。さっきまで三人で飲んでました」
叔父さんがわたしを見つけて「久しぶりな気がするな」と声を掛けてきた。先週ここに来なかったのは金曜だけなのに。でもどんなことでも今、声を掛けてもらえたことにほっとする。
「いつものでいいか?」
「あ……今日は飲んできたから、チーズとワインだけでいい」
叔父さんにそう答え、難波さんの隣に腰掛けた。彼のいる右側の肩が緊張する。
テーブルを見ると、難波さんの目の前にはモツ煮だけが置かれていた。ラム肉はもう食べ終わったんだろうか。一体、いつからここに来ていたのだろう。