甘い恋飯は残業後に


「いらっしゃ……あ、万椰さん」

出迎えてくれたのは、美桜ちゃん。彼女はわたしの顔を見るなり、にやりと意味ありげな笑みを浮かべる。


「宗司さんも来てますよ」

「えっ」

見れば、難波さんはカウンター席に座っていた。

今更引き返すことはできない。わたしは渋々、彼の元へと近づく。


「……こんばんは」

「どうした、今日は飲み会だっただろ?」

「ええ。さっきまで三人で飲んでました」

叔父さんがわたしを見つけて「久しぶりな気がするな」と声を掛けてきた。先週ここに来なかったのは金曜だけなのに。でもどんなことでも今、声を掛けてもらえたことにほっとする。


「いつものでいいか?」

「あ……今日は飲んできたから、チーズとワインだけでいい」

叔父さんにそう答え、難波さんの隣に腰掛けた。彼のいる右側の肩が緊張する。

テーブルを見ると、難波さんの目の前にはモツ煮だけが置かれていた。ラム肉はもう食べ終わったんだろうか。一体、いつからここに来ていたのだろう。


< 201 / 305 >

この作品をシェア

pagetop