甘い恋飯は残業後に
気がつけば、わたし達はコンビニの前まで来ていた。わたしが声を張り上げてしまったからか、店内から出てきた男性がじろじろとこちらの様子を窺っている。
「……すみません、じゃここで」
恥ずかしさと居心地の悪さで逃げたくなったわたしは、挨拶もそこそこに難波さんに背を向けた。
「バッグはいいのか?」
「あ、そうだ、バッグ……!」
返してもらおうと難波さんの方へ向き直ると、彼は不敵な笑みを浮かべてわたしのバッグを高く掲げる。
「何やって――」
「まだ話は終わってない」
さっきから随分子供じみたことをするな、とこっちは難波さんを睨みつけたというのに、彼はそれすら面白がっているように見える。
「家まで送っていく」
わたしは喉まで出かかった言葉を押し込め、代わりに小さくため息を吐き出した。
この人の強引さは今に始まったことじゃない。抗っても無駄なことは百も承知だ。
でも素直に頷くのは癪で黙っていると、「行くぞ」とまた彼の手がわたしの背中を押した。
わたしが逃げ出さないようにか、今度は背中に手を置いたまま歩きだす。
強引なくせに、わたしに触れる手は優しいなんて――ずるい。
鼓動はトクトクと緩やかに高まっていく。