甘い恋飯は残業後に
「だから、水上ちゃんに感謝してるの」
「そんな、感謝だなんて……」
困惑した表情を見せる彼女に、笑って見せた。
「また飲みに行こうね」
「万椰さん……」
水上ちゃんは口をへの字に曲げたかと思えば、瞳からひとしずく、ほろりとこぼした。
「ごめんなさい……っ」
「ちょ……っと、何で泣くの?!」
「私は、万椰さんに感謝される資格なんてないから……」
こういう時に限って、手元にハンカチを持っていない。
わたしは、仕方なく棚に置いてあったティッシュを数枚取って水上ちゃんに渡した。彼女はそれを受け取り、目に当てている。
「資格があるとかないとかの話じゃないでしょ?」
「でも……だってあれは、私の完全な八つ当たりだったし……」
泣いて息苦しかったのか、水上ちゃんは一度大きく息を吸い込んでから事情を話し始めた。
「合コンにもよく一緒に行ってた友達に、最近素敵な彼氏が出来たんです……。どうして私はそういう人に巡り合えないんだろうって凄く落ち込んでたんで、酔った勢いもあってつい、万椰さんに突っかかっちゃって……」
なるほど、そういうことだったのか。
やっぱりいつも通りに言葉を呑み込んでおけばよかったと後悔する。
水上ちゃんは棚からティッシュの箱を掴み、ブーンと勢いよく鼻をかんでいる。