甘い恋飯は残業後に
「本当に、ごめんなさい……」
申し訳なさそうに深々と頭を下げた水上ちゃんを見たら、胸がぎゅっと掴まれたように苦しくなった。
「謝らなくていいから」
言葉を呑み込んでおけば、相手を傷つけることもない。自分も傷つかない。
わたしはそうやって、今までどれだけの言葉を呑み込んできたんだろう。
水上ちゃんにはごまかしたりしないって、思ったんじゃないの……?
「……タイミングは悪かったけど、あの時わたしが言ったことは社交辞令でも何でもなく本心だからね」
わたしは思い切って、正直な気持ちを口にした。
わたしがこんなことを言えば、また嫌味に取られてしまうかもしれない。彼女の傷口に塩を塗りつけることになるのかもしれない。
それでもやっぱり、水上ちゃんにはいつもの当たり障りのない言葉じゃなく、自分の本心を聞いてもらいたい。
「水上ちゃんは同性のわたしから見ても魅力的だから……焦らなくても、きっとすぐにいい人が見つかるよ」
とはいえ、なかなかさらりとはいかず、緊張と恐怖心で言い淀んでしまった。
水上ちゃんはゆっくり顔を上げ、わたしをまっすぐ見据えた。
「万椰さんにそう言われたら、本当にいい人が見つかるような気がしてきちゃいました」
曇った表情を見せるんじゃないかとビクビクしていたけど、どうやら杞憂だったようだ。彼女はいつもの笑顔をこちらに向けてくれている。