甘い恋飯は残業後に
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終業時間までの間、難波さんがオフィスに顔を出したのは午後二時頃に一瞬だけ。重役会議後は外出しているのか社内にいるのかすらわからず、誰も彼の所在を把握していなかった。
彼が行き先を告げずに行動するのはいつものことだけれど、今日ほど苛立たしく思ったことはなかったかもしれない。気がつけば「今どこにいるんだろう」と彼のことを考えてしまっていて、全く仕事に集中できなかった。
パソコンの電源を落とし、冷え切った四杯目のコーヒーを飲み干す。
カップを洗いに行こうとオフィスを出て給湯室に入ろうとしたところで、わたしは向こう側から歩いてくる人物と目が合った。
どくん、と心臓が跳ねる。
「お疲れ」
「……お疲れ、さまです」
会いたかった人が目の前にいる、そう思うだけで胸が高鳴る。ちゃんと顔が見たいと思うのに、実際は恥ずかしさが勝ってまともに顔を見ることができない。
頭を下げながら給湯室に入ると、後ろから難波さんもついてきた。わたしの隣に立って、カウンターにもたれている。わたしはスポンジを手に取り、洗剤を付けた。
「水上と仲直りしたみたいだな」
「えっ」
思いがけないことを言われて、驚く。