甘い恋飯は残業後に
「……先に行って待ってろ」
彼の指先が、ゆっくりとわたしの髪を梳く。淡い刺激に、ぞくりとする。
動揺していると悟られたくなくて、わたしは精一杯、難波さんに向って微笑んで見せた。それでも見透かされているだろうけど、意地だ。
「どうしようかな」
言ってから、これじゃ思わせぶりじゃないの、と後悔した。難波さんに対しては、何故なのか、なかなか素直に頷けない。
すんなり従うのが癪なのか……怖いから、なのか。自分でもよくわからないところがまた厄介で面倒だ。きっと難波さんも、わたしのことを面倒に思っているに違いない。
「そういうことを言うのか」
髪に触れていた手が、わたしの頬に置かれた。彼の指先が耳朶に触れると、肩がびくりと震える。
何かを企んだような笑みと、少し色気の混じった柔らかな視線。
難波さんがこんな表情も見せる人だったなんて、想像もしていなかった。