甘い恋飯は残業後に
他人事じゃないな……。
わたしは、今朝見た『Caro』のクチコミを思い出した。飲食店は、ちょっとしたことが命取りになることもあるのに、どうして報告もなく、何も対策が練られないんだろう。改めて考えても、やっぱりおかしい。
一階を歩くと、そこにも新しいお店がオープンしていた。店頭に掲げられていたポスターを見る限り、どうやらシアトル系のカフェらしい。
時計を確認すると、現在の時刻は七時五十分。難波さんが言っていた九時まではまだ時間がある。
せっかくだから入ってみようかな、と何気なくガラス越しに店内を窺って――心臓が止まりそうになった。
すう、と背中が冷えていく。鼓動はドクドクと早鐘を打っている。この場から早く立ち去りたいのに、足が動かない。
カフェの中にいたのは、美杉さんと、難波さん――。
美杉さんがこちらに首を動かしかけたのを見て、わたしは息を吹き返したように慌てて足を踏み出した。
見られなかっただろうか。
そう思ってから、何だか少し腹立たしくなってくる。
見られたらどうだというんだろう。
疚しいことをしているのはわたしじゃない。
というより、もしかしたら難波さんがわたしにキスしたことのほうが疚しいことだったのかもしれないけど。