甘い恋飯は残業後に
電車が駅に到着して、わたしは逸る心を抑えながら改札を通り抜けた。
どこにいるんだろう、難波さんの方はまだ着いていないのかな、そう思いながらさりげなく辺りを見回す。
改札はこの中央口と北、南に一か所ずつ。ふたつとも回ってみたけど、どうやらいないようだ。
もしかしたら駅を出た外で待っているのかもしれない。彼の家の方向に近い出口を探していると、後ろから肩を叩かれた。
「彼女、ひとり?」
やっと会えたと思わず笑みを浮かべてしまったことを酷く後悔する。
振り向いた先にいたのは、シャツにジーンズとラフな格好をした男性二人組。歳はわたしと同じぐらいか、少し下のように見える。
「すっげー美人なおねーさんだなと思って、思わず声掛けちゃった。これから俺達とどっかいかない?」
「待ち合わせしてるので……」
ナンパされるのは初めてじゃない。わたしはいつものようにそう言って、視線を下げながら彼らの脇をすり抜けようとした。
「待って待って。待ち合わせなんて、どうせ嘘でしょ?」
両肩を掴まれて顔を覗き込まれる。身動きが取れない程の強い力に、恐怖を感じた。
「嘘なんかじゃ――」
「いいじゃん、付き合ってくれてもさー」
もうひとりに退路も塞がれてしまった。
……どうしよう。こんなに強引なのは初めてだ。