甘い恋飯は残業後に


「まあいい。相変わらずパスタぐらいしかまともに作れないけど、それでもいいか? 何ならそこの角のデリカテッセンで惣菜を買っていってもいいが」

顔を上げてみれば、信号を渡った先におしゃれな外装のお店があった。お惣菜、お酒、パンの本日のおすすめがスタンド式の黒板に書かれている。

「難波さんはもう叔父さんの店で食べたんですよね?」

「いや。いる筈の人間がいなかったから、何も飲み食いせずに出てきた」

ますますばつが悪くなったわたしは「すみません」と言って俯くしかなくなった。



結局、難波さんの手を煩わせるのもと、デリカテッセンでお惣菜とパンを適当に買い、難波さんの家に向かった。

この間、難波さんの家から駅に向かった時は、迷ったこともあって四十分程かかったのに、今日はたった十五分であっけなく着いてしまった。


「入って」

「おじゃま……します」

数日後にまたこの場所に来ることになるとは、思ってもみなかった。

改めてリビングを見てみる。整然としていて、無駄なものは置かれていないといった印象。難波さんの性格が部屋にも表れているように思える。

テレビの下に、うちの兄貴が持っているものと同じサッカーのDVDを見つけた。

難波さんも相当サッカーが好きなんだろうな。


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