甘い恋飯は残業後に
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ガタン、と大きめの振動で体が振れた。よろけそうになって、慌てて手すりを掴む。
わたしは今、電車に揺られていた。
窓の外は数日前と同じ景色が流れている筈なのに、まるで見覚えのない場所のように思えた。目に見えるもの全てが灰色に塗られて、色を失っている。
わたしはあの後、トイレに行くふりをして何度か難波さんに電話をした。
仕事中に仕事以外の電話なんて迷惑になるかもしれないのに。そう思いながらも、自分を止められなかった。
結局、彼は一度も電話に出ることはなかった。
当然と言えば当然かもしれない。もしかしたら、電話に出ることすらままならない場所にいたのかもしれないのだし。
そう頭では理解しているのに、じっと待っていることは出来なかった。会社を出て気がつけば、わたしはこの電車に飛び乗っていた。
駅について、数日前と同じ道を辿る。
ここまで来てから、家にいなかったらどうしよう、という考えが頭に浮かんだ。普段なら真っ先に考えることなのに。
今は午後七時を過ぎたところ。家にいない確率の方が高そうではあるけど、もう今更だ。
わたしは難波さんのマンションに着く手前で、もう一度彼に電話を掛けた。