甘い恋飯は残業後に


「これ、常連さんにこっそり出してるの、わたし知ってるんだからね」

「……お前にだけ食べさせる為にこれを作ってたら、破産してしまうだろうが」

叔父さんは、ばつが悪いといった顔をして話題を逸らす。


「万椰は、例えば同じ部署で、ちょっとでもいいなと思ってる男はいないのか?」

そう言われて、同じ部署の男達を思い浮かべてみた。


大貫課長は優しくて仕事も出来て素敵なのに、何故か未だ独身だ。どこか欠陥がある訳でもなさそうだけど、彼は恋愛対象と言うより、どちらかといえば同志という言葉がしっくりくる。

他を考えても、今のところ恋愛対象になりそうな人は見当たらない。


「人間的にいい人は多いんだけど……」

そもそも、今は何となく恋愛する気分にはなれない。仕事が恋人、とあの時水上ちゃんに言ったのは、紛れもなく本心だった。

「そう言えば、三か月前に来たっていう部長はどうなんだ。前に若いとか言ってなかったか?」

言われて初めて、あの男の姿が頭に浮かんだ。さっきはまったく対象じゃないから、思い浮かべもしなかったけど。


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