甘い恋飯は残業後に
ソファーに戻ると、難波さんは自分の鞄をどけてそこに腰を下ろした。彼がグラスに口をつけたのを見届けてから、わたしもアイスコーヒーの方に手を伸ばす。
わたしの前にさりげなく置かれていたストロー。仕事柄かもしれないけど、こういう細かい心遣いがまたニクらしい。
ストローでアイスコーヒーを喉に流し入れ、美味しさに顔が緩んだまま何気なく難波さんの方を窺うと、彼はテーブルに視線を落として小さくため息をついている。
わたしは彼のその様子で、自分が一体何をしにここに来たのかを思い出した。
「……ごめんなさい」
「どうした、急に」
その言葉は驚いたというより、窘めるような口調で聞こえた。
「難波さんの都合を何も考えずに、押しかけてしまって」
「俺が連絡しなかったからだろ」
こんな時なのに、ここまで気遣わせてしまっていることに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「おとなしく待っていることは出来た筈なんです……」
「でも、待っていられなかった」
「……はい」
居た堪れず、俯く。
「おとなしく待っていられない程、俺のことが心配だったんだろ?」
にやりと笑みを浮かべた顔がわたしを覗き込んだ。