甘い恋飯は残業後に
「それは……」
素直に「そうです」と言ってしまえばいいのに、と自分でも思う。でも、素直な言葉はなかなかわたしの口から出てきてはくれない。
「何だ。せっかく嬉しかったのに、違ってるなら喜び損だな」
嬉しかった、と言われたら、もう言わない訳にはいかない。
「違ってません! 本当に、凄く、心配で……」
難波さんは笑いながら「ありがとな」と言って、わたしの頭を優しく撫でた。
「そこまで心配されるっていうことは……もう聞いたんだな?」
「……はい。三浦係長が、情報漏洩させたという話は」
一瞬の、静寂。グラスの氷がカラン、と音を立てた。
それが合図になったように、難波さんは静かに息を吐き出し「ったく誰が漏らしたんだ」と独り言のように呟く。
「来週頭には、会社から正式に話があると思う。だから――」
「承知してます。大丈夫です」
難波さんの言葉を遮って答えたのは、決定的な何かを言われそうで怖かったからだ。
でも、後の言葉が続かず、結局黙ってしまう。
「……三浦係長が『Caro』の店長をやっていた時の店舗マネージャーは俺だ。今回のことは、俺にも責任がある」
――フォレストからいなくなってしまうんですか。
――遠くに行かされるんですか。
訊きたい言葉が喉の奥で渦を巻く。吐き出されないそれはどんどん喉に詰まって、息が苦しくなってくる。