甘い恋飯は残業後に


「それに……三浦係長だけが問題を起こした訳じゃない」

「えっ」

思いがけない言葉に、大きな声が出てしまった。

そう言えば、大貫課長はあの時『その他にも問題がある』と言っていた。そのことだろうか。

「いずれにしても今回の件は全部『Caro』の従業員が絡んでいるから――」

わたしは思わず、小さい子がするみたいに難波さんのTシャツの裾を掴んでいた。


「あの……っ」

声を出してはみたものの、仕事のことと私情とが絡まり合っていて、何を言えばいいのかわからない。でも、何か言わなくては。

「難波さんが『Caro』に関われなくなるなんてことは、ないですよね……?」

「それは、俺の口からは何とも言えない」

曖昧な言葉に、心がざわつく。

「だって、難波さんは誰よりも『Caro』のことを大事にしてきたじゃないですか。それに難波さんがいなくなったら『Caro』は――」

「俺がいなくとも、他の誰かが『Caro』を発展させていくだろ」

そんなこと、難波さんの口から聞きたくなかった。


「“子供”を見捨てるんですか」

「……は?」

「『Caro』は難波さんの子供みたいなものじゃないですか」

違う。本当はこんなことが言いたいんじゃない。


< 262 / 305 >

この作品をシェア

pagetop