甘い恋飯は残業後に
次から次へと込み上げてくる感情を持て余して、下唇を噛みしめる。
「勘違いするな。俺は『Caro』を見捨てたりもしないし、出来ることならずっと関わっていきたいと思ってる。でも、俺は一会社員だ。上の決定には従わなくちゃいけない」
Tシャツを掴んでいたわたしの手を、彼は宥めるようにポンポンと叩いた。
「実際、俺がどうなるかは、現段階では何も決まっていないんだ。だから、今のうちからあれこれ不安がっていても仕方がない」
「……でも」
視界がじわりと滲む。
「わたしは、難波さんと離れたくない……っ」
心の中に最後に残ったのは、私情だった。これまでのわたしならこういう時決して言わなかったであろう言葉が、感情の昂りのせいで口から飛び出していく。
「万椰……」
難波さんの手がわたしの頬に触れたかと思えば、唇を奪われた。長めに触れた後、唇を離して、彼は額をこつりと合わせる。
「この先どうなっても、俺は万椰を手放すつもりはない」
額から伝わる彼の熱。その温もりにますます涙が出そうになる。
わたしは誰かに似たような言葉を言われる度、裏側を探っては疑心暗鬼に陥っていた。
でも――。
たとえ難波さんの言葉が嘘だったとしても、関係ない。
ただ、わたしが、難波さんから離れたくない。
彼に対する気持ちを自覚してから間もないというのに、純粋にそう思えていることが自分でも意外だった。