甘い恋飯は残業後に
「凄く……好きなの」
感情が溢れて、堪らずそう漏らすと、再び重ねられた唇。
何度か優しく触れるだけのキスを繰り返した後、舌で唇をなぞられる。その刺激で僅かに開いてしまった口の隙間から侵入された。
正直言えば、わたしはキスも両手で足りる程しか経験がない。それを見抜かれているのか、この間も今日も、難波さんはわたしを優しく誘導してくれているような気がする。
でも、このまま彼に身を委ねているだけじゃ想いは伝えられない。恐る恐る自分からも舌を絡ませると、びくりと彼の体が揺れた。
「……そういや飯まだだろ、何か食いに行くか」
突然体を離され、難波さんはソファーから立ち上がってそう言った。
「着替えてくる」
「えっ、あの」
あまりに唐突な出来事で、わたしはしばし呆然としてしまった。
さっき着替えたばかりじゃないの? それとも今着ているものは部屋着?
だとしたら、出かける気はなかったんじゃないんだろうか。
やっと回転するようになった頭に疑問を浮かばせていると、難波さんが「じゃ、行くか」と奥の部屋から出てきた。見れば、上はそのままで下をジーンズに履き替えている。
声を掛ける間もなく、難波さんはひとりでさっさと玄関の方に行ってしまった。
程なくして、カシャリと音がした。多分彼が車のキーを手にしたのだろう。ということは、どこか遠くに出掛けようとしているんだろうか。
「何やってんだ、行くぞ」
「は、はい」
わたしはバッグを掴んで、玄関へと急いだ。