甘い恋飯は残業後に
――難波さんは本当に『ヘタクソ』なんだろうか。
誰とも比べることは出来ないけど、どうしてもそうは思えない。
彼はわたしが出来るだけ痛くないようにと、繋がる前も繋がってからも時間をかけてくれたし、そのおかげか、覚悟していた程の痛みは感じなかった。
それどころか――。
これでへただというのなら、世の中の男性はみんなとんでもないテクニシャンばかりになってしまうんじゃないだろうか。
コトを終えて、難波さんがタオルで汗を拭っている姿をぼんやり見つめながら、わたしはそんなことを考えていた。
腕枕をしている手で、難波さんはわたしの髪を弄ぶ。首筋に髪がかかり、淡い刺激にぞくりとする。
「焦らなくともよかったんだぞ。俺は、いくらでも待つつもりでいたんだから」
「そんなこと言って、この間逃げ出したのは誰でしたっけ」
笑いながら言って、わたしは彼の脇腹を指でなぞってやった。
「やめろっ、くすぐったい」
素直に聞くことなく、もっとくすぐってやる。難波さんは悪さをしているわたしの手を掴まえると、ベッドにはりつけ、キスを落とした。
――ああ何て、幸せなんだろう。
でも、とかく人間というものは大きな幸せを得ると、反動なのか、闇を恐れ始めてしまう。
わたしは、真っ直ぐ彼を見つめた。
「冷めたり、してない……?」
難波さんはわたしを見下ろしたまま、くすりと笑みを漏らす。
「誰が冷めるか」
わたしの頬を撫でると、柔らかく微笑む。
「……愛しくて、仕方がない」
一線を越えた後に、まさかそんな言葉を言ってもらえるとは思ってもみなかった。
涙が一筋、流れる。
難波さんはそれを拭うと、わたしの瞼に唇を寄せた。