甘い恋飯は残業後に
「いや実はさ……バーサンが大学時代最初に付き合った女の子って、俺が紹介した子だったんだよ。だから俺とも仲が良くて……」
「……まさか、兄貴が横取りしたとかそういう話?」
「違う違う!」
兄貴は焦って否定する。その様子から見て、本当に違うのだろう。
「大学時代のバーサンはサッカーに夢中でさ、彼女をよくほったらかしていたみたいなんだよね。で、ある時その彼女に訊かれた訳」
「何を?」
「『男が言われて一番傷つく言葉って何?』って」
兄貴を見ると、気まずそうな顔をしている。
「なんも考えなしに『俺なら“ヘタクソ”かな』って答えたら、その子がそれをバーサンに言っちゃって……まさか、そういう使われ方するとは思ってなかったんだよ」
「……確か、ふたりから言われたって聞いたけど」
「ああ……その後に付き合ってた子は誰からかその話を聞いたんだろうな。もちろんバーサンは言わなかったけど、前の彼女があちこちで言いふらしてたから」
ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
兄貴も悪いけど、その女の子もむごい。その上、あちこちに言いふらしただなんて。
ほったらかされて寂しかったのはわかるけど、もっと違う解決法があった筈だ。