甘い恋飯は残業後に
わたしの怒りを察したのか、兄貴は小さくなっている。
「……あのさ。それ、難波さんに話してもいい?」
内心、結構気にしてるみたいだから、とはさすがに言えない。
「いいけど……頼むから、祝勝会中は勘弁してくれ」
「わたしを無理矢理祝勝会に連れて行かないっていうなら、お情けでそうしてあげる」
「……わかったよ。でも何でそんなに祝勝会に参加したくないんだ?」
「多分、隠してても空気で気づかれそうな気がするんだよね。だって……難波さんのことを好きな彼女も行くんでしょ?」
兄貴は察したらしく「そういうことか。確かに、女の勘は鋭いからな」と頷いた。
「バーサンにも言っとくよ」
「うん、ごめん」
「でも……ちょっとすっきりしたな。今まで誰にも言えなくて心苦しかったから」
兄貴は最後にポロリと本音を漏らす。
仕方ない。これもお情けで、難波さんには「兄貴も反省していたから」と付け加えておいてあげよう。
「これでこの間の借りは返したぞ。いや、返した以上のネタだったんだから、貸し一だな」
「祝勝会中に、難波さんにメール送ってもいいんだけど?」
「……すいません。相殺でいいです」