甘い恋飯は残業後に



祝勝会が終わったと難波さんからメッセージが送られて来たのは、午前〇時過ぎ。

何時でもいいから終わったら連絡が欲しい。そう言ったのはわたしのほうで、時間など気にしなくてもよかったのだけど、彼からの文面には「深夜に悪い」と気遣う言葉が添えられていた。


試合と遅くまでの祝勝会で、きっと疲れているだろう。

声が聴きたいという欲求を抑えて、わたしは改めてお疲れ様の言葉と、あらかじめ用意していた“兄貴の告白”を難波さんに送った。

返事はすぐに来た。


《それは千里のせいじゃないだろ。俺からヤツに気にしなくていいと言っておくよ》

わたしが好きになった人は、こういう人だ。

文面に胸が温かくなって、口許が綻ぶ。

おやすみなさい、と送ろうとした刹那、今度は携帯が着信の音を鳴らして驚いた。


「……もしもし」

『今日は応援に来てくれてありがとうな』

「勝ってよかったですね」

『ああ』

電話しているだけなのに、むず痒いような照れくささを感じる。

当たり障りのない日常会話的な話をいくつかした後、ふと、無音になった。

しんとした奥に、彼の気配を探る。


< 295 / 305 >

この作品をシェア

pagetop