甘い恋飯は残業後に
『……寝る前に、声が聴きたかった』
難波さんの声が、耳に甘く響く。
同じことを思っていたのかと、わたしは声を出さずに笑った。
「……わたしも。でも疲れてると思ったから……」
『声が聴ければ、疲れだって吹き飛ぶ』
甘ったるい囁きを、胸の奥でゆっくりと溶かす。だって、一気に溶かしてしまうのは勿体ない。
『じゃ、また明日』
名残惜しくはあったけど、これ以上は本当に疲れさせてしまいそうだ。
「また、明日……おやすみなさい」
『おやすみ……ああ、万椰』
「ん?」
『愛してる』
不意打ちの言葉に動転しているうち、難波さんは言い逃げするように電話を切った。
「もう……何なの」
ベッドに横になり、枕を抱える。
最後にとんでもない爆弾を落とされたせいで、わたしはそれからしばらく眠りに着くことは出来なかった。