甘い恋飯は残業後に
「俺は『Caro』の仕事に慣れているし、然程慣れていない者が来るより即戦力になる」
「なら、わたしは二課の社員よりもまったく慣れていませんし、適任ではないと思いますが」
難波さんは薄く、冷笑にも似た笑みを浮かべた。
「即戦力ではないかもしれないが、二課の冴えない男がヘルプに入るよりも桑原の方がいい」
「……どういう意味ですか」
もう、怒りを抑えることは出来ない。怒気を孕んだ声がわたしの口から吐き出される。
「店が、華やぐ」
……華やぐ、って。
この人までそんなことを言うとは思わなかった。
横暴で自分勝手でも、仕事に関しては男女関係なく考えている人だとばかり――。
「腹減っただろ。昼飯、奢ってやる」
わたしが怒りをあらわにしていたからか、難波さんはそう言って、子供を宥めすかすかのようにわたしの肩に手を置いた。
「……結構です。仕事も詰まっていますし、このままタクシーで先に社に戻ります。難波さんはゆっくりしていらして下さい」
「ゆっくりって……」
わたしは難波さんをキッと睨みつけた。
「着替えたいので……すみません」
難波さんは珍しく決まりの悪そうな顔をして、わたしの肩から手を外す。
この顔を見ることが出来ただけ、多少は気が晴れたかもしれない。