甘い恋飯は残業後に


「どんな男性なんですか?」

美桜ちゃんは心なしか、目を輝かせている。
彼女の中では、その人がもう男性変換されているのか。まあ……男性なのは間違いないけど。

「上司よ、上司」

「その上司っていうのは、この間話してた部長か?」

叔父さんはにやけ顔で、わたし達の会話に交ざってくる。

……良かった。怒ってはいなかったんだ。


「そう。約束も守らないし、社内ルールも無視でとことん自分勝手だし、その上労いの言葉ひとつないのよ? 『こっちの都合で悪かった』とか『ご苦労だった』って言われれば、それでもまだ救いはあるんだけど」

「まあなぁ」

叔父さんはそう言って苦笑する。自分が上の立場だから、なかなか返答に困るのだろう。


「でも、男性は少しぐらい強引な方が素敵だったりしません?」

美桜ちゃんまで何を言いだすのか。彼女の言葉に叔父さんはまたニヤニヤしている。

「恋愛対象になりうる男性ならともかく、あんなのはただ迷惑なだけだよ! 今日だってその上司のせいで一時間長く残業する羽目になったし……。もう、店舗マネージャーでもカンパニー長でも何でもいいから、どこかにいなくなってくれればいいのに!」



「――――それは、俺のことか?」


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