甘い恋飯は残業後に


「嘘……」

だめだ、混乱して何が何だか……。


愚痴っていたのを本人に聞かれてしまったというショックと、難波さんがこの店の常連だったというショックが一気に押し寄せて、何も考えられない。

難波さんはわたしがボソリと零した言葉に「嘘じゃない」と、また憎らしいぐらいに冷静な声で答えた。


「俺は、桑原のことをよく見掛けていたけど」

「ええっ?!」

驚きのあまり、思わず難波さんの方を向いてしまった。
彼は薄く、意味ありげに笑みを浮かべている。


「高柳さんと話す時には子供っぽくなるところとか、酒を飲みすぎてグダグダになっているところとか」

「な、っ……!」

「だから、桑原がすまし顔で仕事をしている姿を見る度に可笑しくてな」

居た堪れず、逃げ出せない今はただ俯くしかなかった。顔が熱くなっていく。

ここにはわたしを知っている人間は誰も来ないだろうと、油断していた自分がバカだった。


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