甘い恋飯は残業後に
「これをもらってもいいか?」
「……え?」
「桑原の分をまた頼めばいい」
自分が箸をつけてしまったから悪いと思ったんだろうか。そんな、わたしの食べかけで、しかも冷えたものを食べなくてもいいのに。
「で、これをただもらうのもなんだから、ラムと交換しよう」
難波さんはそう言って、わたしの返答を聞くことなく勝手にラムチョップを頼もうとしている。
――やっぱりこの人、根本は強引な人、なんだな。
「すみません難波さん、わたしラムチョップはちょっと……」
「なんだよ、この店の一押しだろ?」
「万椰は俺が何を言ってもどんなに勧めても、ラムチョップは絶対食わないんだよ」
叔父さんはそう言って苦笑する。
叔父さんには悪いと思っているけど、食べられないものは仕方がない。
小学生の頃、他のお店で親が頼んでいたラム肉を少しもらって食べてみた時、何とも言えない臭みに気持ちが悪くなってしまったのだ。
それからどんなに勧められても、あの時のラム肉独特の臭みが忘れられなくて、食べる気にはなれない。
「この店のラムを食わないのは勿体ないと思うぞ。じゃ、これを試しに食ってみろよ。それでダメなら仕方ないけど」
難波さんは、自分の目の前にあったお皿を持ち上げ、こちらにカタンと置いた。お皿の上には二本、ラムチョップが乗っている。