甘い恋飯は残業後に
「いや、本当にダメなんで……お気持ちだけで」
「いいから。ひと口、騙されたと思って食ってみろ」
「……勘弁して下さい」
無理強いするなんて、この人やっぱり最悪!
恨めしく難波さんの顔を睨みつけると、彼はニヤリと何かを企んだような顔をした。
「じゃ、俺が食わせてやる」
「えっ?!」
難波さんはラム肉の骨の部分をつまみ、わたしの口許へとそれを差し出した。
「ほら」
「ちょ、っ……やめて下さいっ」
「あーん、だ。黙って口を開けろ」
あーん、なんて。まさかこの人からそんな言葉が出てくるとは。
でも、今はそんなことはどうでもよくて――。
「立派なパワハラですよ!」
「今は就業時間外だ」
「ねえ、見てないで助けてよ、叔父さん!」
叔父さんはと言えば、ニヤニヤと笑みを浮かべてこの光景をすっかり面白がっている。
「観念しろ、桑原」
避けても避けても、難波さんの手は追いかけてくる。
「……ああ、もう!」
こうなったら自棄だ。
わたしは目の前のラムに思いきり齧りついてやった。
……本当は難波さんの手まで齧ってやりたいところだったけど。