甘い恋飯は残業後に


さて、齧ったからには飲みこまなくてはいけない。

気持ち悪くなるのを覚悟で、恐る恐る咀嚼してみる。

――と、以前食べたラム肉のような臭さは全く感じられなかった。それどころか、噛む程に肉の旨味と甘みが口の中に広がっていく。


「……おいしい」

「だろ?」

隣の彼は、ほらみろ、と言わんばかりの勝ち誇った顔。

憎たらしい。
憎たらしいけど――これは思いきって齧ってみてよかったかもしれない。


「万椰が……ラムを……」

わたしがラム肉を食べたことがそんなに嬉しかったんだろうか。叔父さんは今にも泣きそうな顔をしている。

「ちょっとやだ、そんな顔して……」

叔父さんは何も言わず、顔を伏せながら厨房の奥へと引っ込んでしまった。


「もう……叔父さんってば、大げさ。嫌いな食べ物残してた子供がやっと食べたみたいに」

「どんなに勧めても食べてもらえなかった店の一押しを桑原に食べてもらえて、しかもおいしいって言ってもらえたんだ。料理人としても身内としても嬉しいだろうよ」

――確かに、そうなのかもしれないけど。

今まで見たこともないような優しい顔をして、そんなこと言わないでよ。


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