甘い恋飯は残業後に
「本当に近くなんで、大丈夫ですから」
店を出たところでようやく追いつく。
ショックが先に立って今までそこに意識が向かなかったけど、見れば難波さんはワイシャツ姿のままだ。わたしよりも随分前に会社を出た筈なのに。
会社から真っ直ぐここに来たのだろうか。
「こんな時間に女性をひとりで帰せるか」
難波さんはこちらに少し首を回しただけで、今にも歩き出そうとしている。
この人が叔父さんの店の常連だった事実もまだ受け止めきれていないというのに、この上自宅まで知られるのは不本意極まりない。
「あの、それより」
それだけは何とか阻止しようと、わたしはその場に留まったまま声を掛ける。
難波さんは怪訝な顔でこちらを振り返った。
「わたしの分、お支払します」
いくら上司とはいえ、意味もなくご馳走になる訳にはいかない。