甘い恋飯は残業後に


着替えを済ませ、ロッカーに洋服を掛けながら何気なく辺りを見回すと、部屋の隅に置かれていた冷蔵庫が目に入った。

あれ、使わせてもらえないかな。

タイミングよく『Caro』の女性スタッフが出勤してきたので、冷蔵庫を使ってもいいか聞いてみると「名前を書いた付箋を貼っておいて下さいね」とのこと。差し入れで貰った物と勘違いして、誰かが手をつけてしまうのを防ぐ為らしい。

わたしはケースからボトルを取り出し、名前を書いた付箋を貼って冷蔵庫にしまった。保冷剤は冷凍庫の端の方に入れさせてもらう。


「難波さん、朝からカウンターに入ってましたね。はりきってるなぁ」

冷蔵庫の扉を閉めたタイミングで、女性スタッフが何となく嬉しそうにそう言った。


「腕が鈍ったとかで、コーヒーを淹れる練習をしようとしているみたいですよ」

「え、本当ですか?! やったー! 難波さんの淹れたコーヒー、久々に飲める!」

彼女は喜び勇んで、フロアへと駆け出していく。

普段は落ち着いているように見えていた彼女が、あんな子供みたいにはしゃぐなんて。


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