甘い恋飯は残業後に
「でも……人手が」
「その代わり、カウンターに入れ」
意外な言葉が耳を掠める。わたしはそれに納得できず、難波さんをまっすぐ見据えた。
「この忙しい時間帯に未経験の仕事なんて無理ですよ、足を引っ張るだけです」
「俺が逐一、指示出すから」
「でも……」
難波さんに真っ直ぐ見つめ返され、居心地の悪さに目を逸らす。
「……桑原は俺の目の届く範囲にいろ」
「……えっ?」
「行くぞ」
難波さんはわたしの右肩をポンと軽く叩いて、倉庫の扉を開け、先に出て行ってしまった。
……どういうこと?
意味が分からないまま難波さんを追いかけてフロアに戻ると、さっきよりも店内は混雑していた。
すっかり疲弊している様子の店長に難波さんはすれ違いざま、わたしがカウンターに入ることを話したようだ。
「大丈夫だ。心配するな」
わたしが不安を顔に出してしまっていたのか、目の前の彼はそう言って微笑む。
心細い時にそんな優しい顔をされると、横暴な人がいい人に見えてくるから困ってしまう。