甘い恋飯は残業後に
会社を出て、わたし達は近くのガード下まで来た。
ガード下なんて、わたし的には中年のサラリーマンが飲みに来る場所という認識しかない。もしかして、居酒屋のランチにでも連れていこうとしているのだろうか。
少し歩くと、目の前に突然、異国情緒あふれる建物が現れた。
どうやらイタリアンレストランらしい。店先の赤い座面の椅子に立てかけられた黒板には、パスタ、ピザと書かれている。
「ここだ」
難波さんの後に続いてお店に入ると、三十にも満たない程の席はほとんどお客さんで埋まっていた。客層は若い女性から年配の男性まで様々。
――こんな所に、こんなお店があったなんて。
かろうじて奥のテーブル席が空いていたようで、わたし達はそこに通された。外観も赤を基調として派手めだなとは思ったけど、内装もわりとカジュアルな感じだ。
「何、頼む?」
店内を見回していると、難波さんはメニュー表をこちらに広げて見せた。
「普通にランチでもいいけど」
「普通に、って……他に何かあるんですか?」
言いながらメニュー表を覗き込む。が、一瞬で視界から消えた。
「俺に合わせてみるか?」
難波さんはメニューを畳みながら、ニヤリと笑みを浮かべている。
「……じゃ、おまかせします」
――やっぱり何か企んでいそうだけど。
些か警戒しながらも、彼が何故わたしをこの店のランチに連れてきたのかを探る為に、思い切って合わせてみることにした。