甘い恋飯は残業後に


まずテーブルに運ばれてきたのは、前菜の盛り合わせのようなもの。
わたしは驚いて、難波さんを見た。

「……もしかして、コース料理頼んだんですか?」

「いや……まあ、細かいことは気にするな。時間も無いし、食うぞ」

曖昧な表現に、本当はどっちなんだろう、とモヤモヤを抱えたまま、取りあえず一番手前にあったものからいただいてみる。


「うわ! 何これ?!」

わたしが思わず感嘆の声を上げると、難波さんは「うまいだろ?」としたり顔。

「悔しいけど……凄くおいしい」

つい、勢いで本音を漏らしてしまった。難波さんは声を上げて笑っている。

「こんなところにあるし外観も外観だから、味もそう大したことないと思っただろ? 俺も正直、最初ここに来た時はそう思ったんだよ」


悔しいのはそれだけじゃないけど。

そう、心の中で独りごちながら他の前菜も食べてみる。

ランチだからか、フォアグラなどの高価な材料は使われていないように見えたけど、とにかく盛りつけられていた全てがおいしかった。


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