甘い恋飯は残業後に


「この料理で桑原の口からうまいという言葉が出ないようなら、無理にでも聞きだすつもりだったけどな。ワインまで飲みたいと言えたんだ、自分の中でそのことはもう消化出来てるんだろ?」

難波さんはそれを見極める為に、敢えてこの店を選んだの……?


「……すいません」

「何謝ってるんだ? せっかくの幸せな気分を、わざわざ自分から台無しにすることもないんじゃないかと思っただけだよ」

そう言って難波さんは「とにかく食え」とわたしを急かした。

「……ありがとうございます。じゃ、遠慮なくいただきます」


お皿に残っていたルッコラと一緒に、難波さんがくれたタリアータを噛みしめる。

最後まで、やっぱりおいしい。


幸せだ。


「俺に何か聞いてほしいことがあるなら、いつでも聞いてやるよ」

この人は、時々こんな優しい目をする。


難波宗司、という人間は、一体どんな人なのか。

いろんな意味で、厄介な人、であることは間違いない。


< 95 / 305 >

この作品をシェア

pagetop