甘い恋飯は残業後に
「お前にしてはめずらしく、ゆうべ顔見せなかったな」
わたしは仕事帰りに、いつもの『ラーボ・デ・バッカ』に来ていた。叔父さんはそう言いながらわたしのグラスにワインを注いでいる。
「昨日は仕事が忙しくて、帰るの十一時過ぎになっちゃったから」
「そうか、遅くまで大変だな。で、今日もいつものだろ?」
確認するまでもないと思ったのだろう。そう言ってさっさと厨房に戻ろうとしていた叔父さんを、わたしは慌てて引き留めた。
「あと……ラムチョップも」
叔父さんは一瞬驚いたような顔をしてから、クシャリと思いきり表情を崩した。
「万椰があれを気に入ってくれたとは、本当に嬉しいねぇ」
「だって、今まで記憶にあった味と違ったから……」
叔父さんはニヤニヤと笑みを浮かべている。
何だか、恥ずかしい。
「もう、そんな顔しないでよ! わたしがラムを頼んでもいいじゃないっ」
「……いや。昨日、宗司もモツ煮とラムを頼んでたなー、と思ってさ」
ニヤニヤしていた理由は、そこか。
――って。
難波さん、昨日ここに来てたんだ。
「味覚が合う人とは、男女の相性もいいらしいぞ」
「何よ、それ……!」
高らかに笑う叔父さんの後ろ姿を睨みつけた格好で、わたしは昼間飲めなかった分とばかりに、心おきなく、喉にワインを流し込んだ。