甘い恋飯は残業後に



そして、兄の千里と約束した、土曜日。

わたしは怠い身体に鞭を打ちながら、出かける準備を進めていた。もちろんレモンライムハニーは起きてすぐに作り、忘れないようにともう鞄に入れてある。

天気予報によると、どうやら今日は暑くなるらしい。念の為、保冷剤はこの間より多めに入れておいた。


会場はここから電車で三駅先の球技場。そこには一度、兄貴とプロのサッカーの試合を観に行ったことがあるから、場所は何となくわかる。

とはいえ、ひとりで行くのは何となく心許なくて、何人かの友人に声を掛けてはみたものの、あえなく全滅。

よく考えてみれば、仲間内で土曜日に何も予定が入らないのはわたしぐらいなものだった。


球技場に着くと、既に会場は応援に来た人達で賑わっていた。雰囲気に圧倒されながらも、会場内の階段を上がって観客席へと向かう。

「千里ー!」

どこに座ろうかと迷っていると、右手側の方から兄貴の名前を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。見ればそこだけ一際、女性の密度が濃い。

「……なるほど、わかりやすい」

わたしはその女性集団から少しだけ距離を取った席に座ることにした。


< 99 / 305 >

この作品をシェア

pagetop