薬指の約束は社内秘で
「時間がないんですか?」

「そうなの。これから3時の便で、またドイツに戻らないといけないのよね」

「3時って、あと2時間もないですね。お忙しいんですね」

「もう慣れっこだけどね。彼の下で働いてたら、1分1秒と無駄な時間なんてないから」

仙道さんはそう言って肩を竦めるから、背筋がぶるっと震えてしまう。

1分1秒って。そんなに厳しい環境で働いてるのか。

ついさっき販売部を去る時、羨望の眼差しを背中に受けた。

経営統括室は出世を願う社員ならば、誰もが憧れる場所だ。

プライベートが気になってミスするなんて許されない。
そんな責任ある仕事が私を待ってるんだろう。

あぁー。やっぱり自信ない。
それにしても、私を指名した人って誰なんだろう?


噂通りに堅物揃いな――いや。精鋭揃いの経営統括室の室内を仙道さんの後について、奥へ奥へと進む。

どうやら一番奥の応接室で私の上司が待ってるらしい。
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