薬指の約束は社内秘で
「私ね。ドイツ支社では葛城の秘書をしていたの」

「秘書って、役員クラスにしかつかないんじゃぁ?」

「あぁ、日本ではそうよね。秘書っていうか。そうね、彼の補佐をしてたって言ったら、わかりやすいかな」

「そう……だったんですね」


しばらく電話が終わりそうにない葛城さんに代わり、仙道さんが私をここに呼んだ事情を説明してくれた。

どうやら仙道さんはドイツ支社に戻り、葛城さんがいなくなった後の残務処理をするらしい。

私は彼女が不在中の臨時という扱いっぽいけど。

「どうして、仙道さんの代わりが私なんでしょう?」

そんなもん。いくらでも代わりがいそうものなのに。

(社内で募集でもしたら、求人倍率過去最高でしょうよ)

不思議に思って聞いてみる。するとその答えは彼女ではなく、電話を終えた葛城さんから返された。

「藤川は仕事も早いし。気を遣えるからな」

なんと、初めて頂けたお褒めの言葉。

少し前の締めつけられた胸の痛みが一瞬で吹き飛んだ。
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