薬指の約束は社内秘で
「体なんて張れません。お断りです」

「藤川だったら余裕で出来る」

「その自信は、一体、どこから、くるんでしょうねぇ?」

相変わらずな彼の態度に、いまは社内の立場とか関係ない。

そんな絶対服従な信頼関係、「いつ、どこで、どのように、築いたんでしょうか?」と嫌みを返してやりたくなる。

効果がないのは百も承知で軽く睨みを利かせると、

葛城さんは上質そうなソファーの背もたれに深く背中を預けて、長い足を組みながら和らいだ笑顔を浮かべた。

少し前に見た仕事モードな一面とは違う。一瞬気を緩めた表情に、ドキッとしてしまう。

彼にそんな気がないのは、わかってる。

でも、そんな顔ズルいと思ってしまうのは――……

少しずつ速まる鼓動に答えを問いかけると、それを拒否するようにこめかみが痺れ出す。

気にしちゃダメだって思うのに。

葛城さんの骨ばった指先が視界に入ると、髪を優しく梳いてくれたあの感触を思い出してしまうから。
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