薬指の約束は社内秘で
「でもそれだったら、会長から重役達に伝えて貰うとか」

「ふふっ、それは無理。彼ね、そういう根回しは『時間の無駄』としか思わない人だし。そういう役割も得意なのよ。悪役面で矢面に立つ、みたいな?」

「でも、それじゃぁ。葛城さんがっ」


表だって批判を受ける立場で彼を悪く思う人もいるだろう。
事実彼の下で働くようになってから、葛城さんを煙たがる空気を感じることがよくあった。

スマホを持つ手にギュッと力が入る。言葉を失くし黙り込むと、静かな声が届いた。

「矛先が誰か一人に向いてれば、周りは助かるわよね」

「えっ」

「彼がそこまで考えてるかは、分からない。あんな性格だしね。でも、意外と楽しんでやってるんじゃないかな?

だから、藤川さんがそんなに心配しなくても大丈夫よ」

「いえ。私は別に…」

慌てて否定しようとしたけど、それを見透かしたように笑われてしまった。

そんな彼女は、葛城さんの古い友人らしい。
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