薬指の約束は社内秘で
分かってたよ? 

そばにいろって言った言葉に、仕事のメールに付け加えられた2行に、深い意味なんてないことを。

分かっていたのに、なんでこんなにも胸が鷲掴みされたように息苦しくなるんだろう。

止まらない反芻する想い。
逃れるように強くまぶたを閉じると、斜め上から小さな呟きが落ちてきた。


「そんな顔するな。ちゃんと礼はするから」

固く閉じていたまぶたを開かせる低い声。
いつも余裕げで涼しげな瞳が少し困ったように私を見下ろしていて、初めて見るそんな表情に胸が震える。

見つめ合う一瞬。

また別の女性が葛城さんに視線を流しながら通り過ぎていくのが視界の端に映ると、いつかの美希ちゃんの言葉が耳の奥で響いた。


「滅多に見れない笑顔を独り占めできたら、きっとドキドキですよねぇ」

その言葉が体の芯まで響き伝わり、ドクンッと鼓動が強く脈を打つ。
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