薬指の約束は社内秘で
体が硬直したように動けなくなった私に、葛城さんはこんな質問をしてきた。

「あの人が日本酒好みだって、どうやって調べた?」

緊張で痺れた頭に柔らかい声が流れ込む。
私を見下ろす黒い瞳を見つめ返すと、霧が晴れていくように想いが鮮明になる。


少し気持ちを落ちつけたい。

そう思うのに、私の答えを待つ間も思いがけず優しい色を含んだ瞳に吸い寄せられて、うまく声にもならない。
今日だってこんなにも都合よく使われて、「ふざけるな!」と言い放ち、この場を立ち去ることもできた。

でもそうしなかったのは?

心に問いかけると、また胸が強く締めつけられる。

都合よく使われてもいい。彼のこんな表情を誰にも見せたくない。ものすごく勝手だけど。そう思ってしまうのは――

私、葛城さんのことが好きなんだ。
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