薬指の約束は社内秘で
笑顔で挨拶を交わす3人。

田村君は緊張しているのか声がいつもより張っていて、少し離れた場所にいる私のところにも会話が聞こえてきた。


和やかな雰囲気で会話を進める田村君。部長はそれをにこやかな笑顔で見守っている。

でも彼が得意とするドイツ語で何かを話せば話すほど、得意先の顔が曇っていく。


あれ、どうしたんだろう?


遠目から見てもなにやら様子がおかしいと分かるのに。

田村君は極度の緊張のせいか、相手の顔色を窺う余裕もないらしい。

眉間に皺を寄せる彼の様子に部長がようやく気付いた。


「おいっ、田村」


部長が田村君の腕を強く引き耳打ちすると田村君の顔色がサッと蒼ざめるのが分かった。

困り果てた様子で小さく舌打ちをした部長は周りに視線を泳がせ、ホッとした顔でこちらに歩み寄り、


「悪いな。アイツのドイツ語じゃぁ、ダメみたいだ。ちょっと間に入ってくれないか?」
< 129 / 432 >

この作品をシェア

pagetop