薬指の約束は社内秘で
「そっ、そんなのっ。耳とか分からないし! ゴルフだってみんなできるって思いますよっ。俺のせいじゃない。そうでしょう!?」


葛城さんの言葉に田村君が頬を引き攣らせ反論する。

唾まで吹き飛ばす勢いのそれは、葛城さんの顔を眉間に皺を刻んだ不機嫌なものに変えてしまった。


「誰のせいって呆れるな。接待イコールゴルフって考え方が古いんだよ。相手に取り入りたいなら情報収集くらいしとけ」

「情報収集って、相手の趣味まで分かるかよっ」


敬語を使うのも忘れるほど鼻息荒く詰め寄った田村君に、葛城さんは顔を斜めに傾ける。

至近距離で視線をぶつけ合うふたり。

重苦しい空気だけが流れていって、静寂を打ち破る静かな声が葛城さんの唇から零れた。


「それが簡単にできる奴もいる。分からないなら調べる術を身につければいい。やり方は、いくらでもあるだろ」


冷ややかに吐き捨てられ田村君はぐうの音も出ない。

鋭い睨みだけを残し、この場を立ち去った。
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