薬指の約束は社内秘で
ここが広い会場の隅でよかったと思う。時間もだいぶ過ぎていたし。

周りの人も酔いが回っているのか、ふたりのやり取りに気づいた人はそんなにいないように思えた。


それにしても葛城さん。得意先がいるから不機嫌な態度は取れないって言っていたのになぁ。

きっと至近距離であんな風に詰め寄られて、さすがにキレちゃったんだな。

(田村君の唾も飛び散ってたしね)


相変わらず容赦ないって思うけど、最初は田村君を気遣って声をひそめてたんだよね。

私に仕事での注意をするときも、そう。

極力プライドを傷つけないように、打ち合わせルームに呼び出したりと配慮してくれてるのが分かる。


言い方は少し厳しい時もあるけど。

同じミスを繰り返さないように、さりげなく適切なアドバイスをしてくれる。


ストレートな物言いが誤解されやすいだけ。不器用で損な性格なんだなって思う。

きっと本人はそんなことも気づいてないだろうけど……


仏頂面で私の隣に戻ってきた葛城さんに、「ふふっ」と自然な笑みが漏れる。
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